コロナ禍が明けて、インフルエンザがまた流行るようになりました。例年とは違い10月ごろにはインフルエンザが流行るようになり、その勢いが収まる様子がありません。
(
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/flu/ 東京都感染症情報センター)
発熱外来では「インフルエンザ抗原検査を症状が出てからいつ検査するのか」を悩むことがあります。なぜなら、発熱の症状がでてすぐ検査をしても、陰性になることが多いからです。
では、いつ検査をすればよいのでしょうか。
結論から言いますと、陽性になる確率を上げるには、インフルエンザ抗原検査は
少なくとも発熱から12時間たってから検査したほうがよい。
できれば丸1日(24時間)たってから検査をしたほうが陽性率は高い
になります。
2021年に発表された最近の論文(1)によると
37.8℃ 以上の発熱および咳または 咽頭痛を認める、インフルエンザ様症状(Influenza-like illness)があり、PCRでインフルエンザと確定診断がついている人々に抗原検査をおこなうと陽性率(=感度)は
発病12時間以内は50%、
12時間から24時間で60.9%
24時間から48時間で74.2%
と時間がたつにつれてどんどん上がっていきます。
現場では発熱初日に検査をして「陰性」
翌日再検査をしてはっきりと「陽性」
ということがしばしば起こるので、実感に近い論文の結果です。
(ちなみに、12時間以降48時間以内の間でインフルエンザ抗原検査の感度が変わらないとする論文(2)もあります。)
一方で、タミフルなどインフルエンザに効く抗ウイルス薬は発症後早めに飲んだ方がよく効くとされています。抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑えるだけのお薬だからです。48時間以上たってから薬を飲み始めても、何も飲まない患者様と比べて症状に違いはないとされます。(=内服の意味がない)
「高熱やインフルエンザ様症状がある方にできるだけ早くインフルエンザと診断して抗ウイルス薬を処方したい、でも、早く検査しずぎると「陰性」と出てしまい、結局診断ができない。」
このジレンマでインフルエンザが流行る時期はいつも悩みますが、やはり検査の精度を上げて一回の診察で済むように、インフルエンザ検査をご希望の患者様には、少なくとも9時間以上、できれば12時間以上明けてから受診していただくよう、説明させていただいています。
(1)発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に 与える影響:前向き観察研究 :明石祐作 他 日本感染症学会雑誌第95巻第1号2021年
(2)Very high sensitivity of a rapid influenza diagnostic test in adults and elderly individuals within 48 hours of the onset of illness : Yuki Seki et al. PLOS ONE 2020