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現在の新型コロナウイルス感染とワクチンについて

2023年9月20日から、秋の新型コロナワクチン接種がはじまります!

ワクチンを打とうかどうか、迷っている方もいらっしゃると思います。考える参考になればと、これまでの流れをまとめてみました。(文責・副院長)
 

2020年1月15日に国内での最初の感染者を確認して以来、新型コロナのある生活も3年半が経ちました。緊急事態宣言も何度かありましたが、今年の5月8日からは5類感染症に移行し、制限の多かった日々もなんとなく記憶に遠くなろうとしています。



これまでの感染者、重症者、死亡者の数を見てみると、デルタ株による第5波と、オミクロン株による第6波のあいだにターニングポイントがあるのがわかります。
デルタ株までは、重症度が高く、若い方の死亡例も多数ありました。
オミクロン株からは、感染者数は爆発的に増えましたが、若い方で重症化してICUに入るようなことはほとんどなくなりました。しかし今でも症状は通常の感冒よりも重いことが多く、とくに高齢者においては体力を落としたり、死亡につながることがあります。



今年の感染の動向をみると、流行の中心は、4月ころにオミクロンBA5からオミクロンXBBに変わり、7月からはオミクロンEG5(エリス)が増えています。
オミクロンEG5(エリス)はオミクロンXBB1.9.1から派生したもので、XBBの一種です。
前回、5月の予防接種はBA5に対応したものでしたし、今回はXBB1.5に対応したものになります。今後、EG5(エリス)が流行の中心になる見込みなのに、大丈夫でしょうか?



日本の厚労省や米疾病対策センター(CDC)は、BA5(エリス)もXBB1の一種であるし、XBB1.5対応ワクチンで効果が見込めると考えています。また、モデルナのワクチンについては、XBB系統ワクチンを打つと、EG5に対する中和抗体も増加することが確認されています。



動物実験のデータですが、XBB1.5に感染したハムスターは、EG5に対しても中和抗体を産生することがわかっています。このようなことから、XBB1.5対応ワクチンはEG5に対しても効果があると考えられます。
とはいえそもそも、XBBは、感染してもその後の中和抗体が増えにくい、簡単にいうと、XBBは感染しても免疫がつきにくい、ことが報告されています。実際、XBBは一回感染しても再感染することが多いです。また、オミクロン株に対するワクチンは、デルタ株までのときと比べ、効果が低いことがわかっています。
今回行う、秋の新型コロナワクチン(XBB1.5対応)は、どの程度の効果が見込めるものなのでしょうか?
同じオミクロン株であるBA5に対応する、BA5対応ワクチンの有効性から推測してみます。



昨年秋と今年春は、主としてオミクロン(BA5)対応2価ワクチンを使用していました。 このころ出た速報では、発症予防効果はほぼ50%でした。



オミクロン(BA5)対応2価ワクチンの効果を、入院あるいは死亡について見ると、接種直後は70%程度の有効性が見られますが、新型コロナウイルスがXBBに置き換わってからは有効性が落ちています(それでも死亡例だけに限ると50%程度の抑制効果はあったようです)。
おそらく秋のワクチンも効果は同程度と考えられます。発症予防も、重症化予防も50%程度と予測されます。

従来株やデルタ株のころは90%以上の有効性があったのに、だいぶ数値が落ちています。そのぶん、いま流行しているオミクロン株は、デルタ株までより、だいぶ重症度が低下しています。
デルタ株までのワクチンは、すべての人を守るためにありました。今のワクチンは、主には、高齢者や体力の落ちた方を、重い感染からできるだけ守るためにある、と言ってよさそうです。



新型コロナウイルスがオミクロンBA5主体となった2022年7月ころには、デルタ株が主体であった2021年7月ころと比べ、重症化率も致死率も大幅に下がりました。ワクチンの成果ももちろんありますが、ウイルス自体も変質し、季節性インフルエンザと同等近くの感染症になったように思われます。

インフルエンザワクチンの有効性が約60%とされますので、ワクチンの有効性についても新型コロナとインフルエンザでほぼ同等です。インフルエンザも特に高齢者にとっては命を奪うこともある怖い病気です。いま、その怖い病気が二つになっている状況なのです。

ですから、インフルエンザの予防が必要な方は、新型コロナワクチンも接種しておくべきだろう、と考えられます。

今回、新型コロナワクチンが勧められるのは、高齢者と基礎疾患のある方です。その他、高齢者のいるご家庭のかた、受験生などどうしてもかかりたくない方など、インフルエンザを予防したい方は、新型コロナワクチンの接種もやっておくべきだろうと考えます。

当院でも、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を実施いたします。ぜひご検討ください。