ブログ

JN.1株による新型コロナの再流行が心配されます

(文責 副院長)

●東京都で新型コロナ患者が増えつつあります

東京都保険医療局では新型コロナ患者数をモニタリングしていますが、
患者数が今年に入ってから増加の兆しがあります。


(東京都保険医療局 最新のモニタリング項目の分析について(→参考URL))


●今東京で流行している新型コロナはJN.1とEG.5(エリス)がほとんどです

昨年はXBB1.5から派生したEG.5(エリス)が多かったのですが、
昨年末からJN.1が増えてきました。


(東京都保険医療局 最新のモニタリング項目の分析について(→参考URL))


●JN.1は初期のオミクロン株であるBA.2からの派生株です

BA.2から派生していたBA.2.86(ピロラ)が少数見られていたのですが、
JN.1はBA.2.86がさらに変異した株となります。
昨年流行していたXBB1.5やEG.5とは違いが大きいため、
性質を慎重に見ていく必要があります。


(SARS-CoV-2 genome sequence prevalence and growth rate update: 8 November 2023(→参考URL))


●JN.1はEG.5よりも感染力が高いと思われます

海外のデータから、JN.1は
これまで流行していたEG.5やHK.3(EG.5から派生した株)よりも
伝播力が高いことが示されました。


(東京大学医科学研究所 SARS-CoV-2オミクロンJN.1株のウイルス学的特性の解明(→参考URL))


●JN.1が重症化しやすいという証拠はない

一方、さいわいにも、JN.1がEG.5よりも重症化しやすいという証拠は
いまのところないようです。
しかしJN.1のもとになったBA2.86株は
EG.5よりも肺炎を起こしやすい可能性があり、注意が必要です。

(→参考URL)


●JN.1が消化器症状が多いという証拠はない

JN.1が出現したとき、JN.1は下痢が多く、
消化器症状を出しやすいという説がありました。
いまのところはっきりとした証拠はないようです。
ただ、もともと新型コロナは多彩な症状を出しやすく、
急性胃腸炎のような症状であっても新型コロナかもしれません。


●JN.1はそのもととなったBA2.86よりワクチンへの抵抗性が強い

JN.1はXBB1.5対応ワクチン(昨年秋から接種されているワクチン)に対する抵抗性が、
BA2.86より3.6-4.5倍強くなっています。


(東京大学医科学研究所 SARS-CoV-2オミクロンJN.1株のウイルス学的特性の解明(→参考URL))


●JN.1に対してもワクチンは有効と思われる

XBB1.5対応ワクチン(昨年秋から接種されているワクチン)によって
EG.5の中和抗体は27.6倍になっていますが、
JN.1の中和抗体も13.3倍になっています。
JN.1に対してもワクチンは有効であると考えられます。


(Qian Wang et al. (→参考URL))


●まとめ

JN.1は感染力が強く、今後は新型コロナ感染症の主体となりそうです。
幸い重症化しやすいわけではなさそうですが、
肺炎を起こしやすい可能性もあり、注意が必要です。
現行のワクチンは、有効と思われます。

もしワクチンを打っていない方は、
無料での接種は3/31までですので、ぜひ接種しましょう。
当院ではまだ予約可能です。
感染予防にはマスクが大事です。
予防の基本は今でも三密(密集・密閉・密接)の回避です。
もしも発熱や風邪症状があれば、コロナの可能性があります(インフルエンザかもしれませんが)。
当院の発熱外来を受診してください。