副院長の吉岡篤史です。
当院が開院してから2年間行ってきました大腸内視鏡における、
大腸ポリープ発見率、(大腸腺腫検出率、ADR)が
53.1%であり 50%を超えました!!
ADRの算出はアメリカのガイドラインと同じように、
45歳以上、病理で腺腫であったもののみカウント、
ポリープ経過観察・便潜血陽性・炎症性腸疾患は除く、という条件で行いました。
日本の一般的な大腸ポリープ検出率はどうなのか、ということですが、
つい最近発表された京都第二赤十字病院などによる研究では、38.3%でした。
大腸内視鏡検査における腺腫検出に影響を及ぼす内視鏡医関連因子:J-SCOUT研究のデータより
日本消化器内視鏡学会雑誌2025:67
アメリカのガイドラインでは35%が基準で、40%が努力目標とのことなので
当院の53.1%というのはかなり高い率です。
QUALITY INDICATORS FOR GI ENDOSCOPIC PROCEDURES 2024
(American Society for Gastrointestinal Endoscopy :ASGE)
個人のクリニックとして、丁寧に時間をかけて患者様に向き合えた成果と、
ご近所の方々が「近いし新しいクリニックなので検査してみようかな」と
興味をもたれて、初めて大腸内視鏡検査を受けていただけたおかげと思っています。
大腸がんの予防として、大腸内視鏡検査と大腸ポリープを切除することが
大変有効です。「検査をうけるのなら、なるべくポリープが見つかる病院で!!」
ということで、検査するクリニックを迷っている人は
当院もぜひご検討ください。
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ここまでお読みになって、自分のかかっているクリニックではどうなのだろう、
と思う方もいるかもしれません。
参考までに内視鏡専門クリニックで1年ほど院長が行った大腸内視鏡の
大腸ポリープの切除率については全体で40.8%、
企業健診の検査に限ると20.8%と低くなっております。
企業健診の方は繰り返し大腸検査をおこなうので
ポリープが切除されてなくなっているので、
検出率は低めになります(もともとないものは発見もできない)。
大腸ポリープの検出率自体は、患者様がどのような方々が多いのか、
によっても大きく変わります。なので、単純な比較は難しいです。
健康診断やドックの大腸内視鏡をたくさんやっている施設では、
発見率はやや少なめになると思います。
患者様が今通院している病院やクリニックが発表している
ポリープ発見率がたとえ低くても、それが悪いと一概には言えません。
とはいえ、当院での53.1%という結果は、
きちんと見つける内視鏡をやっている! と言ってもよい数字だと思います。
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ここから先はポリープ発見率の低い検査を受けるとどのようになるか!!
(結論としてはせっかく検査をしても、
質の低い検査では大腸癌予防のメリットが受けにくくなるということです)
を説明していきたいと思います。
ADR(Adenoma Detection Rate:大腸腺腫検出率)とは、大腸腺腫というポリープを、
大腸カメラでどのくらいきちんと見つけているかという指標です。
以前、当院の講演会でお話ししたところですが、
大腸腺腫とは将来がん化する可能性があるポリープです。
なので、小さい良性の大腸腺腫のうちに切除することで、
将来のがん化を予防することができます。
しかし、もしポリープを見逃してしまったらどうなるでしょうか?
見逃したポリープが大きくなって、将来がん化してしまうかもしれません。
なので、ポリープ(腺腫)をどのくらい見つけることができたか、という
ADR(Adenoma Detection Rate:大腸腺腫検出率)が大切になるのです。
2010年にポーランドで、
このADRと、大腸カメラ検査後のがんの発生率を調べた研究が行われ、
驚くべき結果がわかりました。

Quality Indicators for Colonoscopy and the Risk of Interval Cancer
N Engl J Med 2010;362:1795803.
ADRが20%未満の医師に検査された人は大腸がんの発生があったのに、
ADR20%以上の医師に検査された人からは、ほぼ大腸がんが出なかったのです。
この研究は健康な症状のない人を対象に行われたので、ADRが低めに出ています。
なので、2014年にアメリカで、
症状があったり、ポリープの経過観察中であったりする、
実際の患者を対象に別の研究がおこなわれました。
こちらの方が普通に病院やクリニックで行われる
大腸内視鏡の現状に近いものとなっていると思われます。

Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death
N Engl J Med 2014;370:1298-306.
実際の患者さまに対しては、
ADRが高いほどがんの発生を予防できることがわかりました。
ADRが33.51%以上であれば、がんを半分にできます。
がんによる死亡は1/3にまで抑えることができていました。
なので、2024年に改訂された現在のアメリカのガイドラインでは、
ADRを35%以上にすること、できれば40%以上にすること、となっています。
QUALITY INDICATORS FOR GI ENDOSCOPIC PROCEDURES 2024
(American Society for Gastrointestinal Endoscopy :ASGE)
当院は2023/6/1の開院以来、
ていねいな観察により腺腫をみつけ、
切除することで大腸がんの予防につなげる、
という目標で検査をおこなっており、
2023/6/1-2024/5/31 の1年は ADR(大腸腺腫検出率) 53.1%
2024/6/1-2025/5/31 の1年は ADR(大腸腺腫検出率) 53.0%
でした。
これは院長と副院長の通算ですが、院長と副院長でADRにほぼ差はありませんでした。
開院してすぐであるので、症状のある方が多く、
ADRがやや高めに出ている可能性はあります。
それでもADRは、アメリカの基準を十分クリアしております。
区の検診もはじまり、便潜血陽性で
大腸カメラを受けるべき方もいらっしゃると思います。
また日本でも、アメリカのように
45歳になったら一度大腸カメラを受ける、というのは大腸がん予防に有効です。
当院では鎮静剤を使った苦痛のすくない検査を行い、
アメリカの厳しい検診基準を十分満たす、
ていねいな観察の大腸カメラを行っております。
ぜひ当院での検査をご検討ください!