病気の説明ページ

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逆流性食道炎 胃食道逆流症

逆流性食道炎、胃食道逆流症は、胃酸が食道側に逆流することによって、胸焼け、みぞおちの痛み、のどの違和感、呑酸(口の中に苦い水が上がってくる感じ)胃の張り感などの症状が出る病気です。食後2~3時間ぐらいで症状がでたり、就寝して姿勢が横になった後にこのような症状が出る場合は、逆流性食道炎、胃食道逆流症が原因と考え、胃カメラを行うことが多いです。胃カメラで食道にただれやびらんがあれば、自覚症状がなくても「逆流性食道炎」と診断します。食道にびらんがなくても自覚症状があれば「非びらん性胃食道逆流症」と診断します。
この病気は近年増えています。現代人が食べる質や量が、胃酸が出るようなもの(甘いものや高脂肪食)を多く食べるようになった、ピロリ菌感染が少なくなり、胃酸が適切に分泌されるようになった、ストレス社会で食道過敏が誘発されるようになったことなどが原因として考えられています。
生活習慣の改善が大事で、食べすぎの防止(腹八分目)、就寝3時間前以降の食べ物を食べない、高脂肪食を避ける、肥満の解消などがあげられます、それと同時に、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケキャブⓇ)や胃運動改善薬の処方を行います。特に食道炎が軽症で自覚症状が強い方に関しては、患者さんご自身が自分症状に合わせて薬を飲む、オンデマンド療法があるのも特徴的です。
ストレスや季節の変動、自律神経の調子などで症状が再発したり治ったりなど、症状の出方が多彩なのもこの病気の特徴です。
高血圧症の薬のように必ずしも毎日必ずきちんと薬を飲む、というのがご本人のとってベストではないケースもあり、薬の調節についてはいろいろと相談しながら治療を進めていきます。

食道がん

食道がんは、胃がんや大腸がんよりは少ないのですが、膵がんや肝がんと同程度の発生率があり、消化器における重要な疾患のひとつです。
早期の食道がんは内視鏡治療が可能なものが多いのですが、食道は胃や大腸に比べて壁が薄いため、少し進行するだけで内視鏡での根治が難しくなります。そうなると、手術や、化学療法と放射線療法を組み合わせて行う治療が必要になりますが、いずれにしても身体への負担は大きくなります。
さらに進行すると他臓器に転移して根治ができなくなったり、食道が完全に詰まって食事が取れなくなったりします。
ですので、食道がんもまた、なるべく早期発見し早期治療をしたいものです。

食道がんは、比較的リスク因子のはっきりしているがんで、喫煙者、大酒家、男性に多く、とくにお酒を飲んですぐに顔が赤くなる方に多いとわかっています。
このような方は、胃カメラを年1回くらい定期的に行うことをおすすめします。当院ではフジフイルムの最新内視鏡を用い、狭帯域光観察(Blue laser imaging:BLI)によって食道がんの診断精度を上げています。これは観察時に当てる光の波長を限定することによって、粘膜内の血管をより深くのものまで明瞭に見えるようにするもので、早期の食道がんは血管が多く茶色に見えるため、とくに平坦な早期食道がんについては診断率が上がります。
早期のうちに発見できれば、内視鏡にて治療することが可能になります。たばこを吸っていて、お酒が好きな方は要注意です。当院の苦痛のすくない内視鏡で、定期的に観察することをおすすめいたします。

胃がん

胃がんは肺がん、大腸がんについで、日本人の死因として3番目に多いがん(1)です。
その原因として重要なのがピロリ菌であり、ピロリ菌がいるとがんの発生率が15倍にもなるとの報告があります(2)。なので当院では、まずピロリ菌がいるようなら除菌をすることをおすすめします。

ピロリ菌について

ピロリ菌を消しても、最初からピロリ菌がいなかった方よりは胃がんのリスクが高いので、基本的には毎年1回は胃カメラをすることをおすすめします。
早期に発見できれば、内視鏡による治療が可能になります。進行がんであっても転移がなければ手術による根治が期待できます。転移があれば化学療法を行うことが多いのですが、胃がんの化学療法で根治を望むことは難しいのが現状です。
当院では鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡を行っております。毎年行う検査であれば、なるべく楽にした方がいい。そうして検査を受けてもらって、胃がんで苦しむ方がいなくなることを願っています。

  1. がんの統計2022 公益財団法人 がん研究振興財団
  2. 日本ヘリコバクター学会 H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版
    http://www.jshr.jp/journal/index.html

胃潰瘍 十二指腸潰瘍

胃は、消化のためにかなり強い酸である胃酸を分泌しています。胃は胃酸から胃の粘膜細胞を守るため、防御因子として粘液、重炭酸、一酸化窒素などを分泌しています。このバランスが崩れると胃の粘膜は破壊され、胃潰瘍が発生します。
粘膜および粘膜下層が破壊されると、筋層が露出します。筋層の外側には薄い漿膜下層と漿膜があるだけなので、筋層の深くまで潰瘍が進むと、胃に穴が開きます。ここまでくると入院はほぼ必須ですし、手術が必要にもなります。
また、胃潰瘍は出血して、吐血やタール便(黒くてべたっとした便)が出ることもあります。大出血は緊急に止血などの処置をしないと、命に関わることもあります。

胃潰瘍の主な原因はピロリ菌です。ピロリ菌による慢性胃炎は胃の粘膜に対する攻撃因子として働き、胃潰瘍を起こします。ピロリ菌の除菌が必要となる理由のひとつです。

ピロリ菌について

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ感染症)

  • 検診でピロリ菌がいると言われた
  • 慢性胃炎と言われた
  • 胃の症状でなやんでいる

ピロリ菌は人の胃に住み着く細菌です。子供のころに感染し、そのままずっと胃の中にいつづけます。
感染経路はよくわかっていませんが、おそらく経口感染(口からピロリ菌が入って感染する)だと考えられています。衛生環境の改善や上下水道の整備などにより、ピロリ菌の感染率は低下を続けています。それでも60代以上の半数が感染しており、20代でも10%弱の方が感染しています(1)。
ピロリ菌が感染した胃は慢性胃炎を起こし、しだいに胃の粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」という状態になります。
さらに、ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんの原因にもなります。ピロリ菌がいると胃がんのリスクが15倍以上にもなると報告されています(2)。
さいわい、現在は「ピロリ菌除菌療法」によってピロリ菌を完全に退治してしまうことができます。ピロリ菌を退治できれば、胃がんのリスクを減らせます。

除菌療法は2種類の抗生物質と1種類の制酸剤(胃酸をおさえる薬)を、朝夕、7日間飲んでもらうだけの治療です。
除菌療法が終了したら、1ヶ月以上開けて、ピロリ菌がちゃんと退治できたか確認するための呼気テストという検査をします。80~90%の方が除菌に成功します。
もしピロリ菌が除菌できなかった場合には、飲む薬を変えてもういちど除菌療法を行う、「二次除菌」をします。
当院ではピロリ菌がいる方には除菌を行い、当日に呼気テストまで行うことができます。
ピロリ菌の除菌療法は、若い方ほど胃がんの予防効果が高いことがわかっています。当院は、20歳でのピロリ菌の検査と除菌を推奨する「ハタピの会」(3)に参加しています。
若いうちの除菌は、たいへん有効な胃がん予防になります。何の症状もなくても、いちどは検査することをおすすめします。ぜひともご相談ください。

  1. 高槻市中学生ピロリ菌対策事業
    https://www.city.takatsuki.osaka.jp/soshiki/41/5468.html
  2. 日本ヘリコバクター学会 H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版
    http://www.jshr.jp/journal/index.html
  3. ハタピの会(NPO法人 二十歳のピロリ菌チェックを推進する会)
    http://hatapy.org/sp/

大腸がん 大腸ポリープ

  • 便潜血陽性となった
  • 以前大腸ポリープがあると言われた
  • 以前大腸ポリープの切除をしたことがある

昔の日本は大腸がんが非常に少ない国でした。しかし生活の西洋化にあわせて大腸がんは増加し、現在では男性のがん死因の2位、女性のがん死因の1位になっています(1)。
一方でアメリカやヨーロッパでは、大腸がんが大幅に減っています。その理由のひとつは、検診で大腸カメラによるポリープ切除を行っているからです。
アメリカでは45歳になると大腸カメラを受けることが勧められており(2)、見つかったポリープを切除することで将来のがん発生を予防しています。

日本の検診では便潜血検査が行われ、便潜血陽性となったら大腸カメラが推奨されます。しかし、検査をためらう方は少なくありません。

便潜血陽性になったら、ぜひとも大腸カメラを受けてください。
大腸カメラを受けて、ポリープがあれば切除して、はじめて大腸がんの予防につながるからです。

そのためには、検査が辛いものであってはなりません。
だから当院では、苦痛のすくない、鎮痛剤・鎮静剤を使用しての大腸カメラを行っています。
ポリープを見つけて切除することが大切なので、きちんと見つけるていねいな観察を心がけております。
切除したポリープのうち良性のポリープの多くは「腺腫」と言われるものです。この腺腫が見つかった方の10%程度が、将来がん化すると考えられています(3)。
つまり、小さいうちにポリープを取ることで遠い未来に大腸がんになる可能性を消しているのです。
わたしたちは大腸カメラを行い、ポリープを切除することで、あなたが将来大腸がんになる可能性を減らしたいと思っています。

  1. がんの統計2022 公益財団法人 がん研究振興財団
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2022_fig_J.pdf
  2. CDC(Centers for Disease Control and Prevention)
    https://www.cdc.gov/cancer/colorectal/index.htm
  3. Surveillance of colonic polyps: Are we getting it right?
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4726668/

便秘症

便秘症の定義は、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出出来ない状態とされています。ただし、これはあまりにも漠然としているように感じます。臨床的にはたとえ症状がなくても、週1回の排便ではやはり少ないでしょう。週2回程度の排便で、腹部症状がなければ、特にお薬などの内服は勧めません。
便秘に悩む方は女性は若い方でも多いですが、年齢を重ねると急速に男性にも便秘の方が増えていきます。
便秘症もまずは、良い排便習慣が大切です。一日一回は時間を決めてトイレで排便しようとすること、繊維質をよく取ること、水分を取ること、適度な運動、は有効です。それでもなお、便秘に悩む方は多くいらっしゃいます。
便が硬いとどうしても出しづらいので、酸化マグネシウムなどの便をやわらかくする薬をよく使います。ここ数年で、便をやわらかくするタイプの薬がいくつか増えたので、より適切な治療薬を選択できるようになりました。
一方、センノシドやピコスルファートなど、昔からある薬は腸を刺激するタイプのものが多くて、よく効くのですが、連用すると効果が薄れます。そのため、どうしても必要なときに限って頓用で使うのが良い使い方と言えます。
便秘で悩む方には、直腸まで便が下りてきているのに出せなくて、残便感が続く方がいます。排便時の姿勢(和式トイレのように体と脚の角度を35度する)や、いきみ方の工夫で改善が得られることもありますが、場合によっては摘便や浣腸が必要になることもあります。
長年便秘が続いた方では、腸が慢性的に拡張してしまい、治療が難しくなることがあります。それでも、最近登場した薬によって、なるべく刺激性の下剤を避ける形での治療ができるようになってきました。
さいごに、便秘の原因としてがんが隠れていることがあります。とくに一度も検査を受けたことがない方は大腸内視鏡を受けることをおすすめします。

下痢症

下痢は日常生活でもときどき起こるものです。
食べ過ぎ、脂もののとりすぎ、ストレスや緊張で起きることもあります。このような下痢は発熱がなく、ほとんどは一時的なものです。
冬にはノロウイルス、ロタウイルスのようなウイルス性の腸炎が増えます。ウイルス性の下痢のときはしっかり水分を取り、補助的に整腸剤や下痢止めを使うことが多いです。
夏には腸炎ビブリオ、キャンピロバクター、サルモネラのような食中毒の病原菌による腸炎が増えます。整腸剤だけでなく抗生剤を使うこともあります。
下痢に血が混ざっているときは重い病気のことが多く、腸の血流が一時的に低下して起こる虚血性腸炎や、感染性腸炎のなかでもキャンピロバクター、サルモネラ、O-157などの腸管出血性大腸炎などがありえます。
一時的でなく、慢性的に続く下痢もあります。
生活習慣が原因になることもあります。睡眠不足などのストレスで下痢が続くことはあります。人によっては乳製品のとりすぎ、カフェインのとりすぎ、内服している薬剤やサプリメントが原因となり得ます。
感染性腸炎にかかった後や、抗生剤使用後に腸内細菌が乱れて、数ヶ月くらい下痢がながびくことがあります。
心不全、腎不全、慢性膵炎、甲状腺機能亢進症など、他の病気が慢性下痢を引き起こすこともあります。
腸の動きや感覚が過敏になり、下痢と腹痛がつづく、過敏性腸症候群があります。
血液の混ざる下痢がつづくときは、潰瘍性大腸炎、クローン病などの腸管免疫の異常による病気を疑うことになります。
がんによって腸が狭窄することで、下痢がつづくこともあります。
このように下痢の原因はかなり多岐にわたります。
そのため、下痢の診察においては下痢の性状をよく聞いて、必要に応じて血液検査、レントゲン検査、便培養検査、内視鏡検査などを行い、診断をつけていくことが大切です。原因を見極めての適切な治療が下痢の解決につながります。 下痢でお困りの方、ぜひご相談ください。

炎症性腸疾患

  • 下痢や腹痛がつづく
  • 血便が出る

炎症性腸疾患とは、慢性の腸炎です。腹痛や下痢、血便が治らずにずっと続く病気です。食あたりや、いわゆるおなかのカゼなら、数日や一週間程度で治りますが、炎症性腸疾患の症状は、治療しないと何ヶ月も何年も続くことがあります。
十代や二十代など若い方の発症が多いといわれますが、高齢者の発症も増えています。若い方がこの病気にかかると勉強や仕事など、社会生活に影響がでます。高齢者であれば大幅に体力を落とすこともあります。
そのため、腸炎をおさえる薬を使って治療します。昔からあるメサラジン薬(ペンタサ、アサコール、リアルダなど)やステロイド薬だけでなく、最近はいろいろな新薬が使えるようになり、ほとんどの方が病気のない方とほぼ同じ生活を送れるようになっています。
しかし病気そのものを完全に治す方法は、今のところはありません。そのため症状をおさえたり、再発を予防する治療を続ける必要があります。

下痢や腹痛、とくに血便がつづく方はご相談ください。
副院長は東京都立多摩医療センターで炎症性腸疾患外来を受け持っております。豊かな経験を生かして、あらゆる症状にご対応いたします。当院のみで治療が難しい場合は、適切な医療機関へご紹介もいたします。
また、ご進学・ご就職などで当地ちかくにご転居される方で、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療をご継続されるときは、ぜひとも当院にご連絡ください。
潰瘍性大腸炎、クローン病は国が指定する難病となっております。難病指定医がおりますので、申請や更新に必要な臨床調査個人票の作成も可能です。